Kaguyatom

(Explicit)

ゆくアルバム、くるアルバム 2017

 

 お久しぶりです。ついにオフになるまで記事を書けませんでした。何か月ぶりだ?ええ?

 

 みなさんは昨年の記事『ゆくアルバム、くるアルバム』を憶えているでしょうか?

kaguyatom.hatenablog.com

 今年ももう終わりということで、音楽の話です。自分にとってかなり挑戦の年で、今年はオールドスクール及びソウル・ファンク等、音源制作のためにルーツを攻めていました。"Momma"*1ということです。おかげで新しいアーティストを発掘する余裕はありませんでしたが、聴いたものはどれも良く、特にブラック・ミュージック界隈では今年は凄かったのでは…?と思っています。というのも、ジェイ・ジーやケンドリック、エミネムなどビッグネームもアルバムをドロップしましたし、ロジック、ジョーイ・バッドアス、ヴィック・メンサなど若手注目株のアルバムもたくさん出て、わざわざ発掘しなくても何度も繰り返し聴けるものがありすぎました。いい年でした。

 

 ということで、『ゆくアルバム、くるアルバム 2017』ですが、TOP10です。17枚は多い

 


 

  1. Big Fish Theory - Vince Staples

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     『Summertime '06』からわずか二年。というか、間に『Prima Donna』出してるので、ほぼ毎年アルバム出してるってことになるんですね。ヴィンス・ステイプルズの特徴は、ぶっ刺すビートと声ですよね。早めのビートに鋭い声が乗っかり、内容も濃くて最高でした。タイトルにもなっている『Big Fish Theory』というのは、水槽のサイズによって魚の大きさが変わるってやつなんですが、ヴィンスは「才能があっても"社会"という檻に囚われていると発揮できない」ということを伝えていて、『Summertime '06』と同じく黒人社会の闇を描いています。個人的に『Love Can Be...』とか『Bag Bak』がヴィンスっぽくて好きです。"Wannabes buzzin"というリリックもトラップやマンブルが流行っていることに対するアレっぽくて最高ですね。

     

     

  2. 4eva is a Mighty Long Time - Big K.R.I.T.

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     ビッグ・クリットのアルバムを俺ほど待っていたやつはいないのでは…?

     僕のビッグ・クリットへの評価は、ジェイ・コール、ケンドリック・ラマーと並ぶレベルで、内容のコンシャスさは本当にトップレベルだと思ってます。ビートは少しポップ寄りで聴きやすい感じなんですが、内容のレベルがもう聴きやすいとかそういうの超越してますね。構成的にはコールの『4 Your Eyez Only』と似ていて、二つの視点から描かれてます。二枚組構成になっており、全部で22曲あるかなり長いアルバムで、聴きこむの大変でした。前半はラッパー"ビッグ・クリット"としての曲で、後半は一個人である"ジャスティン・スコット"としての視点で書かれた曲になっています。歌モノっぽいのもいい。めちゃくちゃコンシャスな内容なのに、なんとなくポジティブになれる、ビッグ・クリットらしいアルバムでした。

     

     

  3. The Autobiography - Vic Mensa

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     一曲目『Didn't I (Say I Didn't)』からブチ上げてきて、内容も「俺はこんなすごいラッパーで、アガってきてる。けど自分のルーツ*2は忘れちゃいけないんだぜ」というポジティブなやつです。スピットする感じもめっちゃいいし。これはよくラッパーが使う手法なんですが、サウンドとリリックで相反する内容を描くやつやってます。『Rollin' Like A Stoner』です。アガる曲かと思ったら、内容は「パーティ↑*3どうなん?」という、コンシャスっぷりです。あと最後の最後にシングル曲、プシャ・Tとファレルとの『OMG』を持ってくるのもヴィックっぽいです。「これが俺だ」みたいな。

     

     

  4. MADNASPAIN - BASE

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     唯一の日本人ランクインです。以前ラップの記事で紹介したBASEの3枚目のアルバムです。以前の記事です

    kaguyatom.hatenablog.com

    kaguyatom.hatenablog.comBASEの特徴はなんといってもその「黒さ」*4です。どうしても日本語ラップはなっちゃうんですが、そういう「ダサさ」を一切感じない、ヘビーなアルバムです。日本のものを聴くとき、僕が注目するのはフロウとビートなんですが、BASEはかなり高いレベルにあると思ってます。日本語になると内容とかどうでもよくて、古き良き「俺はスゴいんだぜ」みたいなヒップホップスタンスに惚れちゃいがちな僕ですが、見事にやられました。残念なのはApple Musicにないことで、聴きたい方はiTunes Store等から購入しましょう。*5

     

     

  5. Laila's Wisdom - Rapsody

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     ラプソディって名前、ズルくない?プロデューサーが『ズルい名前ランキングNo.1』のナインス・ワンダーだから仕方ないけどさ。声もめっちゃカッコいいし、ビートもカッコいいし、聴くだけでも文句なしの出来なのに、ケンドリックとの『Power』での、ビヨンセ『Formation』みたいな女性の力訴えかける感じ。もうね。SWAG*6ですよ。あと、僕めっちゃ泣き虫なので、『Chrome (Like Ooh)』のメッセージ刺さりました。男でも、泣いてええんやで……

     このアルバムに関してインタビューで答えてました。

     あと印象に残ったのは『U Used 2 Love Me』で、タイトル見た瞬間に「これはコモン『I Used to Love H.E.R.』では?」と思い聴いてみると、まぁそう取れなくもない感じでした。コモンみたいにネタバレしてくれるといいんですが、そういうわけでもないので、俺の考え過ぎなのかもしれませんけど。でも、ここ数年でヒップホップ業界が変わってしまったのは事実なので、ダブル・アンタンドラ*7の可能性もありますね。いや~~いい

     

     

  6. Scum Fuck Flower Boy - Tyler, The Creater

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     タイラー・ザ・クリエイターはアルバムを出すたびに評価を上げていると思っていましたが、今回のアルバムで一気に上がったんじゃないかなと思います。ちゃんと『Goblin』の時のような攻撃的な雰囲気も残しつつ、色々なトピックに言及していて、まさに正統進化だな、といったところです。サウンド的に今年一番好きかもしれないです。彼はずっとそうですが、正直なんですよね。それこそ『Who Dat Boy』みたいな自信のあるトラックもそうですし、『November』みたいな不安そうなタイラーもいいです。素直さで言えばジェイ・コールが一番かな、と思いますが、タイラーもなかなか好きです。

     

     

  7. ALL-AMERIKKKAN BADA$$ - Joey Bada$$

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     アルバムタイトルになっている『ALL-AMERIKKKAN BADA$$』は、わかる人なら「おっ」となるものだと思います。もちろんアイス・キューブの『AmeriKKKa's Most Wanted』ですよね。レジェンドである2パックより「俺の方がラップがうまい」発言*8で注目を浴びてしまったジョーイですが、こういうところでオールドスクールへのリスペクトを表明するのがいいですよね。そもそも上記の発言も「ラップスキルに関しては」という話だったので、ちゃんとインタビュー聞いてない奴らが勝手にキレてただけだったんですけどね。ていうか、ジョーイの曲聴いてればリスペクトしまくってるのわかるはずなのにね。

     ともかく、このアルバムは「KKK*9の文字からもわかるように、白人至上主義や政治、いつまでも変わらない差別に対するメッセージになっています。ジョーイはずっとこういう社会問題に言及していて、ヒップホップのあるべき姿を体現している数少ない若手ラッパーかな、と思います。必聴です。

     

     

  8. Everybody - Logic

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     黒人と白人のハーフでありながら、白人と同じ肌の色をしているロジックは、血と肌の色によって黒人社会と白人社会の両方から否定されます。そんな経験をしたロジックは黒人ラッパーが陥りがちな「黒人だけが差別を受けている」という方向にはいかず、タイトル『Everybody』の名の通り、あらゆる人種、あらゆる人々、つまり全ての人々が平等であるべきだ、というメッセージを打ち出します。そのうえで、自分と同じような状況にある人たちへの救済も行い、見事に世界中の人々を救うところに到達しました。彼も経験したうつ状態による自殺願望を乗り越えたことをベースに、自殺防止のためのホットラインをタイトルにした『1-800-273-8255』は、実際に自殺防止に役立ったという事実があります。*10前作の『The Incredible True Story』は大きなヒットにならなかったものの、今回のアルバムで本当にヒットを打ち出すことができました。しかし、残念なことに彼は次のアルバム『Ultra 85』を最後に引退すると宣言しています……*11

     

     

  9. 4:44 - Jay-Z

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     僕の最も尊敬するアーティストであり、ヒップホップ・レジェンドの一人であるジェイ・ジーがアルバムをドロップした、という事実だけで米三杯くらい食えました。なんとこれが13枚目のアルバム。これはとにかく、もう、原点回帰というか、なんというか……

     年をとっても健在のリリシズム*12と、フロウ。伝説です。あと個人的に一番嬉しいのが、名前を「JAY Z」から「Jay-Z」に戻したことで、これが一曲目の『Kill Jay Z』にもあるように、コマーシャル寄りになっていた「音楽業界におけるJay Z」、過去様々な悪事を働いたスターになった後の「Jay Z」など、あらゆる自分自身を「殺し」、一からのスタートを切る、といったメッセージになっています。浮気を告白し、妻であるビヨンセに謝罪しているのも、母親は実際にはレズビアンでありながら自分と兄弟を生み、育ててくれた感謝を述べているのも。いろいろ感極まって泣きそうでした。

     

     

  10. DAMN. - Kendrick Lamar

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     Damn. こんなアルバムありか!?ズルいです。スターダムにのし上がったケンドリックは自身を神に擬えながら、様々なトピックに触れます。とにかく聞いてください。『LOYALTY.』と『DUCKWORTH.』のビート最高なんですが、どちらも僕の大好きなプロデューサーであるナインス・ワンダーが関係しているようで。『DUCKWORTH.』はナインスが作ってるので言わずもがなですが、『LOYALTY.』はラプソディの前作『Crown』から『#Goals』のビート制作現場にいたテラス・マーティンのアイデアで作られたそうで、もちろん『#Goals』はナインスがプロデュースしてます。

     

     

  以上、2017年のTOP10アルバムでした。

 


 

  正直、ほかにも腐るほどいいアルバムあったのですが、ふたを開けてみると案の定オールヒップホップで、結局こうなるのか~~といった所存です。他にも紹介したいアルバムがたくさんあるので、ここからは番外編というか、ノミネート編というか、聴いたやつです。カテゴリ別で紹介します。

 

 

 

 


 

 今年は日本語いっぱい聴いたなあ……去年も豊作とか言ってた気がするし……

 

 おやすみ

 

追記 リンク貼っておきました

 

 

4:44 [Explicit]
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*1:ケンドリック・ラマーのアルバム『To Pimp A Butterfly』の一曲。元々の故郷であるアフリカを訪ねた時の話になっている

*2:家族、友人、故郷など

*3:パーティ↓とパーティ↑には違いがあり、前者はホームパーティ的なやつで、後者はクラブなどで行われる大規模なもののことを指します

*4:アンダーグラウンド、つまりクラブ等の所謂「現場」と言われるところでは、マリファナなどのドラッグや犯罪が蔓延っており、それを描写している

*5:Base「MADNASPAIN」をiTunesで

*6:スワッグ、またはスワグ。カッコよさやスタイルなど、自分の特徴に対し大きな自信を持っていること。または自分の特徴そのもの。

*7:フランス語でdouble entendre。同時に二つの意味を持つこと。

*8:Joey Bada$$ On What Black History Month Means To Him - YouTube より

*9:クー・クラックス・クラン - Wikipedia

*10:1-800-273-8255: Logic Song Ups Calls to Suicide Prevention Lifeline – Variety

*11:Logic Confirms Next Album Will Be His Last | Complex

*12:叙情詩的な趣。叙情主義。ラップにおいては、リリックにおける表現力を指す。

何度考えても絶対に俺は正しい、と思うのは正しいことだろ

 

 何かを評価する際に基準となるものは何でしょうか?知識?経験?直感?

 何かを評価する際にどの観点から捉えますか?主観的?客観的?

 よく言われるのは、知識や経験に基づいて客観的に評価することが物事を正確に評価するために必要なことだ、ということです。知識に終わりはありませんし、経験も限られた時間の中で得られる量は限られます。一人ひとりの価値観や知識量などに違いがある以上、客観性というものにも限りがあるということがわかります。好みもあるし。だからこんな音楽が好きとか嫌いとか、ピーマンうまいまずいだとか、「漢 a.k.a. GAMIが悪い」「いやシバターが悪い」とか、そういう違いが生まれる訳です。いくら蚊帳の外にいて物事を遠くから眺めていたとしても、その物事について知識を得たり考えたりする時点で主観性の呪縛からは逃れられないということになります。*1

 また、人間だれしも「自分が正しい」と主張し、認められたいという願望があります。それはそこら辺の小学生でも、上坂すみれTwitterをやめる原因になったイキりオタクでも、みんなが嘘だとわかっていても根気よくYoutubeに真相動画を上げ続ける主婦でも同じで、自分の正当性を評価し、それを主張し認められることで、その欲求を満たすのです。それでも年を重ねていく中で、他人に説得されたり、論破されたり、そういう経験をして、納得していなくても納得したふりをしたり、完全に物事に対する評価と態度を変えたりして、自分の欲求をどこかに追いやりながらなんとかやり過ごす方法を見つけ出します。これは学校と三国志から得られる一つの事柄といえるでしょう。*2

 大人になると、上記のような主張をすることは「自分勝手」と捉えられたり「わがまま」となり、つまり「子供」だと思われます。大人は得てして子供だと思われるのを嫌いますから、どんどん自己主張をする場面が減り、相手の控えめな主張に対し納得や妥協を見せながら折衷を図ります。諸葛亮の提案と、それに対し「いやしかし私は…」と少しずつ食い下がった玄徳。二人とも大人だ。*3

 しかし人には、絶対に譲れないものもあります。止まらない未来を目指して、ゆずれない願いを抱きしめて進みます。飛べないハードルを、負けない気持ちでクリアしていきます。しかしそれすらも、権力や立場によって打ち砕かれる瞬間があります。人はそのたびに限界を感じながら孤独な夜を迎え、どれだけ泣いても朝に出会えないと思ってしまいます。それでも納得したような素振りを見せ瞳を光らせ、心では納得していなくても表に出さず、光と影を抱きしめたまま日々を生きていくのでしょう。戦う毎日です。君はその儚さと強さを教えてくれたけど、傷つけないように歩いて行けたらいいのに…… *4

 

 僕は今年でバスケットボール歴が13年目になります。ただ兄弟がやっていたから、という理由で始めてから、本当にそのスポーツをやりたいがためにやるようになって、気付けばただただ研究し実験する日々が続いてきました。Twitter上のNBAファンとしてそこそこの知名度を獲得する程度には研究成果が得られています。

 スポーツというのは競技中に判断することが非常に多く、それが団体競技ともなるとそれぞれがそれぞれの判断をしていますから、分岐点が多く、起こりうることの量が半端ないです。故に、これが正しい、と100%言い切れるものは存在していないでしょう。でも、スポーツにはルールがありますから(得点とかコートとか)、限りなく正解に近い動きは存在していると思います。単なる技術だけでなく、上記によっても違いが生まれてくるし、だからプロだとかアマとか階級としてそれが表れているのだと考えています。

 まぁなぜこんなことを書いているかというと、そのバスケットボールに関して、どれだけ泣いても朝と出会えない孤独な夜の中にいるからです。できる限り客観的に捉え、どれだけ考えても、それに対し納得できる材料が少な過ぎれば、態度を変えることは不可能でしょう。たかが持っている知識や経験の違いでここまで戦い続けなければならないのです。現時点では僕は論を展開するだけで、証拠になるような裏付けできてません。なのでガキの戯言だと思われています。「SNSで粋がる暇あるなら証明してみろプレイで」といいうことです。でも僕もゆずれない願いがあります。証拠というのは己から叩き出すものだと思っているので、「それに対して、証拠不十分? ならパスとシュートのオートクチュール」というアンサーです。*5

 ただ、可能性として、お互いの知識や経験、考えの違いなどがパズルのピースのように、お互いを補うように機能する場合もあります。コービー&シャックが三連覇できたのも、レブロン・ウェイド・ボッシュのスリーキングスがスポールストラと和解して優勝したのも、グレッグ・ポポビッチとサン・アントニオ・スパーズのゆかいな仲間たちも、R&Bグループ『ニュー・アディション』*6も、まさにパズルのピースのようです。「あーでもないこーでもない」と試行錯誤しながら、一枚の絵や写真へと姿を変えていくことになります。

 そのために人は知識や経験を得、物事を慎重に考えていくのだとしたら、ソロでやるモンスターハンターくらい面倒だと思うし、それでも乗り越えられない壁があることもワンパンマンの強さくらい理不尽です。なんなんだよマジで。

 

 まぁどちらにしろ争いというのは避けたいものですが、魔法騎士レイアースの新装版が全巻セットでめちゃくちゃ安かったので、これくらいは主張させてください。ちなみに、アニメBlu-rayボックスはクソ高いです

 

 

*1:ラッパー・漢 a.k.a. GAMI とユーチューバー・シバターのビーフ(争い)より

*2:声優・上坂すみれTwitterに対するオタクのリプライ、松居一代Youtubeチャンネル、横山光輝版『三国志』より

*3:横山『三国志』より

*4:アニメ『魔法騎士レイアース』の主題歌『ゆずれない願い』『光と影を抱きしめたまま』より

*5:同上。また、超ライブ×戦極 U-22 MCBATTLE 2016 Rude-α vs Lick-G より

*6:ステファン・カリー、クレイ・トンプソン、ケビン・デュラント、ドレイモンド・グリーンの四人からなるNBA発のR&Bグループ

ダサいと思っていたものを受け入れカッコいいと思い始めることはカッコ悪いことに思えて

 

 『フリースタイル・ダンジョン』という番組が始まってからというもの、今まで「不良の音楽」というようなイメージを持たれていたヒップホップは今や多くのコマーシャルで起用されており、ラッパーのDOTAMAがコンピューターとフリースタイルでバトルしたり、サイプレス上野アコムカードをテーマにラップしたりしていて、身近でカッコいいものだと思われて来ているかと思うと、最近Youtubeなどで挟まれる広告の半分くらいがラップのような気がしてきました。すごい時代だ

 

 ヒップホップを聴く人の中でも、日本語ラップなんてカッコよくないし、ビートに対するアプローチとか微妙だ、なんていうのはよくある話で、洋ラップしか聴かなかった僕もまさにそう思っていたんですけど、今まさに『フリースタイル・ダンジョン』のようなMCバトルと日本語ラップの魅力に取り憑かれています。まさか、自分が日本語ラップを聴くことになるとは。

 しかし僕はヒップホップ好きと言えどニポンゴラップに関しては素人なので、どのラッパーの曲、つまり音源を聴けばいいのか全くわかりません。そんな僕ができることとすれば、バイナルを掘る*1ことだけでした。探せば探すほどカッコいいものが出てきて、誰かが言っていた「好きなやつにしか本当のカッコよさはわからない」ってのがすごいよくわかります。これは今適当に考えた名言です。あ、あとすみません、バイナル*2って何ですか?

 

 ところで、一度「ダサい」と思ってしまうとそれを覆すのって相当なインパクトが必要ですよね。EDMのビート細かくなっていってピークで止まりつつ一言からのドゥンドゥンはダサいと思うし、これを覆すインパクトには未だ出会えていません。人それぞれ「ダサい」ものは違うと思うんですが、上記に関しては共通してると思います。

 逆に、カッコいいと思っていたことが何かしらの影響でダサく思えてしまうこともあります。高校生の時に死ぬほど聴いていたONE OK ROCKも自分が周りに合わせるために聴いていたということに気付くや否や聴かなくなったし、中学生の時悪ぶって学校に携帯を持ち込んでいたのも思い出すと枕に顔を埋めたくなります。小学生の時に買ったドラゴンを纏った剣のキーホルダーは今でもカッコいいけど

 「俺はHIP-HOP生まれHIP-HOP育ち」なので、とにかく自分の芯がブレるのが嫌です。周りに合わせて好きでもないものを聴いたりやったりなんてダサすぎるし、自分を大きく見せたり逆に小さく見せたりするのもダサいと思います。等身大のラブソングも聴かなくなりました

 でもそう考えると、「日本語ラップ=ダサい」だった自分の価値観が、『フリースタイル・ダンジョン』というインパクトによって変わってしまうのはすごいダサいことなのかもしれない、と思うとつらくなります。つらくなるとMCバトルを見て元気を出します。そうして日本語ラップにさらに詳しくなります。この負なのか正なのかわからない謎のスパイラルに嵌っているということです。「もちろんわかってる ブログってのは鏡」*3ということです。

 ここまでくると、カッコいいとは「ありのまま」でいることなのかな、なんて気がしてきます。やはり俺も男。「カワイイ」ではなく「カッコイイ」で測られたい。千葉雄大ではなく伊藤英明になりたい。伊勢谷友介もカッコいい。竹野内豊に関しては名前も似てるし。なので僕には可愛いとか言わないでください。あ、嬉しいことには嬉しいんですけど

 

 人間というのは不思議なもので、年を重ね成長する過程で、感性も考え方も変わっていきます。「結婚する前にある程度人生楽しみたいよね」と言っていた姉も就職してすぐ寿退社したし、それに対して微妙な顔をしながら「いいんじゃない?」と今までもそうだったように奔放なフリをしている親父に、どうせ孫ができたら可愛がるんでしょと言ったら「それはどうかな」とかニヤニヤしてたのに、すっかりデレきったおじいちゃんをやっている様子が家族で構成されたLINEグループに送られてきます。どんなふうに変化するのかわからないなら、未来のことを考えたり、過去を思い出して後悔したりするのは無駄なことのように思えます。そのために使うエネルギーは、「今」を生きることと、可愛い甥っ子の誕生日を祝うために使いたいです。ちなみに、僕は「子供苦手なんだよ」と今でも思っています。

 


 

 すみません、話は変わるんですが、MCバトルを見ていく中で好きになったMCが何人かいます。ダンジョンしか見ていなかった時好きだったのはGADOROとかR-指定さんだったんですけど、いろいろ見ていくと好みは変わりますね。今僕の中には「好きなMCランキング」的なものが存在し、これは1位から100位くらいまであるんですけど、久しぶりにブログを書いたついでに全部を紹介したいところですが、無理なのでTOP5を紹介したいと思います。

 

5位 GIL

角度は関係ねえ 俺は一直線前のめりで進んでいるだけ

 福島のラッパーですが、UMB2014でシャウトするとき周りは30秒くらい喋る中一人だけ一言「東北だ」と言ったくらいレぺゼン精神がすごい

 

 

4位 CIMA

 俺の首にインスリン注射? 知らねえ、韻踏にPeace Up

 『フリースタイル・ダンジョン』を見ている人なら聞いたことあるかもしれないんですけど、関西のラッパーで、バイブスとライミングが最高

 

 

3位 BASE

一人では脆く誰かの犬 虎の威を借る奴らをKill

 MCバトルでもカッコいいんだけど、何より音源がめちゃくちゃカッコいいし、デス・ロウ・レコーズのTシャツ着てるのもいい

 ちなみに、ビートに使われているのはロニー・リストン・スミスの『ガーデン・オブ・ピース』という曲で、ジェイ・ジーの『デッド・プレジデンツ Ⅱ』でも使われているクラシックジャズになります。つまりクラシック

 

 

2位 呂布カルマ

俺にとって最も尊いのは作詞作業 この一行 一分一秒 まさに今日

  カッコいい

クソはテメエがクソであることを恥もしねぇからいつまでもクソだ

世界に1つだけの花だって嘘だ

みんな同じ格好したがるのは何故だ

携帯のカメラで撮った写真別人 他の誰かみたい

  カッコいい

 

 

1位 mol53*4

 

7:12~

魂ってやつは一度 燃えたら灰になるまで 俺は燃やしきるMCだ 俺が死んでも俺の言葉は死なないと思ってる

 熱い

 でもmol53 右肩上がりの Ill Daddy, Hello

 オシャレ

俺の性感帯は脳みそ 心に吐いてみろ

 カッコいい

 

 


 

 ありのままがHIP-HOP。このMC達、本物のHIP-HOPです。

 

 

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*1:音源を探して聴くこと

*2:英語のVinylのこと。レコード盤の素材がビニールであることから、レコードを指して使われる

*3:呂布カルマが『フリースタイル・ダンジョン』に出演した際、モンスターであるR-指定に放ったライン「もちろんわかってる ラップってのは鏡」から

*4:「燃えるゴミ」と読みます

ラップ

 

 

 

 UMBをご存知ですか?

 UMB("Ultimate MC Battle"、アルティメットMCバトルの略)は日本最大級のMCバトル(ラッパー同士がディスりあうやつ)イベントの一つで、2005年から今まで毎年、年末のビッグイベントとして、数々のベストバウト(レベルの高いバトルのこと)を生み、ヘッズ(所謂ファン)を魅了してきました。MCバトルは基本的にトーナメント形式で行われますが、UMBも例外ではありません。フリースタイルダンジョン(以後FSD)から入ったにわか層である僕は2014からしか見てません。カッコが多くてすみません。ちなみに、UMB2014は過去最高とか言われてましたが、個人的にはUMB2016の方が好きです。みなさんは、個人ですか?

 

 実は、これは伝わってないかもしれないんですけど、今回のテーマは「UMB2016」なんですよね。今まで見た2014、2015、2016の各大会の中で、5回以上見たのは2016だけです。「少ない」とか、にわかファンには言わないようにしましょう。

 

 「実は」が二回続くのはいい文章なんでしょうか。僕にはわかりませんが、おそらくよくないでしょう。……実は、このUMB2016が面白かった理由が、これもめちゃくちゃにわかな理由なんですが、ネームバリューのある有名ラッパーが出ているからなんですよね。その有名ラッパーに対して無名のラッパーが噛みつく様も最高だし、有名ラッパー同士がぶつかり合ってどちらかが負けてしまう厳しさも「アツい」ので最高です。「最高」も二回続いてしまいましたね。文章を書くのが下手

 

 僕的ベストバウト(前述)を5つ選んだので、お願いします。ちなみに、ネタバレになるのと、ベスト8以降は全部良かったので除外してます

 


 

 大会の基本的なルールとして、1、2回戦は8小節×2本(DJがかける曲の8小節ずつを交互に2回ずつ)で進行され、ベスト16(3回戦)からは8小節×4本(交互に4回ずつ)で行われます。準決勝からは、先攻が8小節×4本or16小節×2本及び、3人のDJの中から曲をかけるDJを選択します。これは、MCバトルの特性上、後攻が非常に有利であることから来ています。また、勝敗を決めるのは観客と陪審員です。まず観客は、先攻もしくは後攻どちらか一方のMCに声を上げます。それで声に差がない場合に延長に入ります。観客の声でどちらかに決まると陪審員の投票になります。観客と陪審員両方の支持を得たMCが勝利となります。観客と陪審員がぶつかり合った場合は延長になります。はい、ベストバウトです

 

  • 1回戦第1試合: Rack vs. Siva

  初登場同士の戦いでしたが、いわゆる高ラ、高校生ラップ選手権でプロップス(人気)を得たRackと、普段はラップをやるバンドを組んでいるSivaの戦いで、Sivaのことを知らなかったのもあって僕は「これはRackだろ」と思っていました。先攻Rackで始まり、特徴である固いライミング(韻を踏むこと)をかましていてさすがだな、と思っていたら、後攻のSivaが会場を巻き込むアツいバイブス(感情とか勢いとかもろもろ)で観客を味方につけました。Rackの二本目ではライミングに観客が沸かず、Sivaがダメ押しの呂布カルマというMCのサンプリング(曲の歌詞や違うバトルで他のMCが言ったことを引用すること)、「言葉の重みが違え Rack 誰やねんお前」でRackを殺し、Sivaが勝利しました。

 この戦いのポイントは、やはりSivaのサンプリングですね。呂布カルマが過去戦極MCバトルという大会で言った「これがボクシングなら有り得ねぇ 言葉のウェイトに差がありすぎる」と、UMB2014で相手であったスナフキンに言った「スナフキン 誰やねんお前」から来ています。別々のバトルから引っ張ってきたSivaの即興のスキルの高さに脱帽です。

 

  続いて、大阪・梅田でラップをしている集団である「梅田サイファー」の一員で、過去UMBをはじめ複数の大会で好成績を残しているふぁんく、上述の呂布カルマと同じ名古屋のMCで、呂布カルマに「よく似た」MCであるヤングたかじんが戦いました。こんな好カードで8×2なのがもったいないですね。「ね」って言われてもわからないですよね、すみません。説明しておくと、梅田サイファーなどの大阪のラッパーは固いライミングを信条にしていて、ふぁんくはライミングで有名なラッパーですが、それに対し呂布カr……ヤングたかじんは、ライミングにこだわらず(踏まないとは言ってない)、強烈なパンチライン(相手にダメージを与える言葉)を繰り出すスタイルで有名です。

 それもあって、ふぁんくは最初「相手はあの『言葉の重み』おじさんだ」などで煽りつつ、ライミングをかまし、いつものふぁんくといった感じでした。しかしヤングたかじんは「サイファーの王様 追い返す大阪」と、ライミングを含んだパンチラインで上回りました。それを受けふぁんくは「サイファーの王様 大麻の量かな?」と呂布カルマのラインを拾って「王様 大阪」の4文字の韻に対し、8文字で踏み返す凄まじいライミングを披露します。しかし呂布カルマはその後もパンチラインを吐き続けヤングたかじんが勝利しました。

 ザ・呂布カルマといった感じのバトルでした。とにかくパンチラインを吐き、相手のライミングにも動じないスタイルがドハマりしました。特に2本目の「いつまで韻踏んでんだ ただの言葉遊びじゃねえか」からの「お前のCDが売れない理由を教えてやるよ CD買ってまでダジャレなんか聴きたくねえってことだ」のパンチラインがもう、ボコボコにしてました。最高でした。ちなみに、ふぁんくの入りのラインは最初のトレイラ―に入ってます(3人目)。

 

  • 3回戦第2試合: MOL53 vs. ウジミツ

  めちゃくちゃ有名なMCで、以前大麻でワッパいかれた(捕まった)MOL53(「もえるごみ」と読む)と、呂布カルマに似たスタイルのウジミツの勝負です。ヒップホップと大麻などのドラッグは関係が深く、「リアル」を語るMOL53は大麻で捕まるとかいう「リアル」を体現する男なわけです。1回戦でも「UMB2016おまちどおさま 今年は俺に任せな」と死ぬほどカッコいいラインを吐いていました(最初のトレイラ―を参照)。ちなみに僕はMOL53めちゃくちゃ好きで、曲もめっちゃ聞いてます。

 MOL53が「お前みたいなザコMCは殺す」みたいなことを言うと、ウジミツは「死体からウジとなりまたウジミツに戻る」と言い返します。それに対しMOL53は「いや、人は死んだら終わりなんだよ」とド正論をぶつけます。リアルな男がリアルなことを言うのでもちろん会場は沸きまくります。MOL53の勢いを止められず、ウジミツは負けてしまいます。

 MOL53はとにかくワードセンスが良く、必ずしも長い韻を踏んだり、フロウ(歌いかた)がめちゃくちゃいいとかではないんですけど、バイブスとワードセンス、そしてその「リアルさ」で相手をボコボコにしてしまうパンチラインを生むラッパーで、ウジミツもパンチライン型ではあるんですが、それを当たり前のように上回るMOL53がいかにすごいかがわかりやすいバトルでした。

 

  • 3回戦第5試合: ムートン vs. BASE

  これはUMB公式がYoutubeに動画を上げてるので見てもらいましょう。

3回戦第5試合

 

 

3回戦第5試合 延長

 

 

 見てもらったらわかると思うんですけど、二人とも何言ってるかわからないと思うんですよね。慣れると聞き取れるんですけどね、一応ね。延長に関しては二人とも草(大麻)の話をしてるので意味も分からないと思うんですけど、注目してほしいのが、二人の声質と、延長のムートンの「秘密主義第七サティアン ポッケん中クッシュかサティバ」や「心構えが ラップ始めたの九日前か?」のライミングです。ヤバいですね。 二人とも声質がカッコいいのと、フロウがめちゃくちゃうまいのが特徴です。あと、BASEは呂布カルマが代表を務めるレーベル『Jet City People』の一員です。だから「呂布カルマ殺してえし~~」と言ってます。よろしく

 

  • 3回戦第7試合: 句潤 vs. じょう

  「さっきも喋った 俺が喋ったじゃん それパクリって言うんだ 今日のレクチャー1 I'm No.1 今日のワンダーランド I'm No.1」というラインがトレイラ―の5人目が言っていると思います。あれが句潤です。フロウがめちゃくちゃうまいことで有名です。対するじょうは高校生ラップ選手権で名を上げたMCです。アンサー(相手のディスに対する返し)が特徴です。

 先攻の句潤がフロウで見せると、それを真似したじょうに対し喋る感じで「同じフロウ聴いて面白かったっすか?」と観客に聞きます。パンチラインです。じょうはまたそれを真似して喋ると、上のラインになるわけです。「パクリ野郎が」と言われてしまったじょうは、結局巻き返せず終わってしまいます。

 このバトルは不利と言われている先攻がいかに試合を運ぶかの例と言えます。見事に自分のペースで戦った句潤のバトルの強さが感じられます。すごいですね

 


 

  ここまで面白さを解説してきたつもりです。FSDだけで止まっている人や、Youtubeで見てるだけの人とかいたら、高くないのでUMBなどMCバトルイベントのDVDを買って見てみましょう。好きなMCやラップの面白さに気付くとドップリハマれます。

 

 あと、気付いた人もいるかもしれないんですけど、ベストバウト2つ目くらいで疲れてます

 

おわり

 

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モーニング・クオリティ

 

 こんにちは。一応新年最初の記事なので言います。あけましておめでとうございます。酉年ですね。みなさんも鳥ですか?鶏ですね。干支に縛られるのはもうごめん、Kaguyatomです。

 

 先日、実家に帰って、地元の焼肉屋で飯だけ食ってきました。父は50代に入ってから健康を意識し始めたのか、食事制限と運動を始めました。「最近足が太くなっちゃってさ」とかLINEで報告されても、何も言えませんね。「じゃあ運動やめろよ」とは言えませんから。親孝行なので

 

 父は自転車が好きで、サイクリングをします。自転車はママチャリ、スポーツチャリ(ロードバイククロスバイク、マウンテンバイクなど)に分類されますが、それぞれを一台以上所持している父は自転車マスターですね。そろそろ○○サイクルになってもおかしくないかもしれません。ちなみに、界隈では自転車好きのことを「自転車海苔」と呼ぶらしいです。誤字ではないです

 

 ところで、みなさんはインスタグラムをご存知ですか?いや、タダの前置きですよ、ナメてるとか、そういうんじゃなく……

 

 インスタグラムは便利なので、父も自転車海苔としてよく投稿してます。IDにもサイクリストと入っています。スポーツチャリと自然、それからその日のランチを一枚の写真にまとめたものに「いいね!」するのはもはや生活の一部となりました。サイクリングも生活の一部にすればもっと健康的になれるかもしれませんね。健康とはなんでしょうか?心とは?

 

 話を戻すんですが、思い出すと、干支という概念を考え出したのは小学生になる直前でしょうか。父とお風呂に入りながら「俺もお前も子年だからな」と言われたのがきっかけだと思います。ついでに、高校に通っていたころ、週末の朝によく父のサイクリングについていったことを思い出しました。朝7時に何も食べずに出発し、サイクリングの途中にカフェでモーニングを食べ、帰ってくるというスポーティでオシャンティな朝です。コーヒーも好きなのでモーニングが大好きでした。思えば、コーヒーのおいしさと淹れ方を教えてくれたのも父でした。成長する過程で人は学びます。ヴェルタースオリジナルは祖父でしたけど

 

 その行きつけのカフェに9時頃に着くと、こじんまりとした店内にはすでにコーヒーを嗜む常連さんが二人ほどいて、暇だなぁ、と思うと同時に、ウィンドブレーカーを着てヘルメットを被った二人組がモーニングを注文するのと何か違うのか?という問いにぶつかります。ぶつかったところで、何も影響なく日々は進行します。僕たちは生きています。ほら、太陽が沈む……

 

 一般的なモーニングがどんなものなのか知らないので一応内容を説明すると、マグカップいっぱいのコーヒー、雀の涙ほどのジャムが添えられた二枚切りかというほど厚いトースト、サラダにスクランブルエッグとウィンナーという、ホテルの朝食バイキングかのようなプレートです。一般的なホテルの朝食バイキングもよくわかりません。目玉焼きの時もあったので、一応それなりの幅は用意されています。しかしホテルではなく、所詮は個人経営の小さなカフェ、サラダもスクランブルエッグも普通なんですが、コーヒーは好きでした。酸味控えめのブレンドで、ドリップも気を遣われていて、それでいて朝でも飲みやすい濃くないコーヒーです。「ブレンドはその店の命なんだよ」と言っていた父の言葉を思い出します。

 

 しかし、このカフェのモーニングを他と隔てるのは、そのトーストです。とにかく厚い食パンをどうにかしてフワッフワにトーストします。「ッ」があと二つくらい入っても妥協できるくらいです。口に入れるとバターの香りが広がり、スクランブルエッグやウィンナー、コーヒーとの相性も抜群で、気持ち程度に塗られたジャムが程よい酸味をもたらし、観衆を飽きさせることなく、優勝できます。特にサイクリング好きなわけでもないのに付いていったのは、このモーニングが目的でした。道の駅のパンで妥協させられた時はさすがに頭に来ましたが

 

 あれから何年も経ち、今や僕は実家から離れ一人暮らしです。家のオーブンレンジも最近まで説明書を読んでいなかったので使い方を把握できておらず、レンジとしてしか使っていませんでした。最近グリルとして使うことを覚えたので、いろいろやっています。うまい。そんな時脳裏をよぎるのが、モーニングでした。「あのトーストを、お家で―」という思いが心を支配します。ここで記憶は途切れ、気が付くと目の前には4枚切りの食パンがありました。近所のスーパーで買える一番厚いやつです。食パンを焼く前にバターを塗るとフワフワになるのを知ってますか?知ってますね。すみません、すみません…… ちなみに、こうやってトーストすると、黄色く色付いたトーストが出来上がります。ジャムを少し垂らして食うだけでうまいです。普通のトーストに戻れないくらいうまいです。でも―

 

 足りない。何かが足りない。カフェの雰囲気?コーヒー?プレート?いや、「フワフワ度」だ。フワッフワを求めているのであって、これはフワフワに過ぎない。なぜフワを重ねてフワフワを表現したのか?あのモーニングはどうやって作られたのだ?あのクオリティはどこから?人生とは?

 

 ここで記憶は途切れ、気が付くと目の前には黄色くなった食パンとバターがありました。さっきよりバターの減りが大きい。ちなみに、この時点で三日経っていますが、食パンの枚数は減っていませんでした。スーパーの店員さんには「しょくぱんまん」と名付けられました。しかし止められませんでした。そしてトーストを繰り返す。まだ見ぬモーニング・クオリティを目指して―

 

 話は変わりますが、これは一昨日の朝食です。パンにバターとマヨネーズを塗って、サラミとチーズをのせて焼きました。チーズとコショウの相性は最高。ラップにハマっているので韻を踏みました

 

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おわり

 

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ゆくアルバム、くるアルバム

 

 2016年が終わろうとしています。このブログを読む人なら僕が音楽しか聞かないのは常識でしょう。ということで、2016年に出されたアルバムに順位をつけつつ、2016年にちなんで16枚紹介します。TOP16ということです。

 


 

  1. This Is Acting - Sia

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     歌がうまい

     

  2. black SUMMERS'night - Maxwell

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     相変わらずファルセットが綺麗でカッコいい、個人的にはもっと上だけど好みがわかれそうな感じではある

     

  3. The Life Of Pablo - Kanye West

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     カニエっぽいし客演も豪華なんだけど思ったよりハマらなかった、TOP5に食い込む勢いが欲しかった

     

  4. The Letter O - Dame D.O.L.L.A.

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     好きな選手だし、ビートがめちゃくちゃカッコいい

     

  5. Bobby Tarantino - Logic

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     1曲目のFlexicutionと9曲目の44 Barsが最高

     

  6. There's Alot Going On - Vic Mensa

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     もともと好きだった16 Shotsで話題になったし、声が好き

     

  7. untitled unmastered. - Kendrick Lamar

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     自分が理解できないものにはすごい魅力を感じるんですけど、このアルバムのビートだけは全然理解できなかった、脳が追い付かなかった

     

  8. Malibu - Anderson .Paak

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     オシャレすぎて卒倒しそうになった

     

  9. CRCK/LCKS EP - CRCK/LCKS

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     ここで日本語ランクインです。以前も紹介しましたが、最高。いっぱい音使う癖にうるさくなってないのがすごい、センスがヤバいんだと思う

     

  10. Bucket List Project - Saba

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     タダ配信組の一人なんですけど、とにかくビートがクールでカッコいい

     

  11. Fantôme - 宇多田ヒカル

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     多彩なサウンド、ドハマりのヴォーカル、深いリリックなどがすごい。彼女もセンスがヤバそう

     

  12. 24K Magic - Bruno Mars

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     ちょっと古風なポップみたいなサウンドで、マイケル・ジャクソンみたいな感じなんですけど、ブルーノのハスキーボイスが生かされてていい

     

  13. Telefone - Noname

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     さっきのSabaも確かシカゴ出身でこのNonameもシカゴ出身の女性ラッパーなんですけど、すべてのトラックでサンプリングしてないっていうの聴いて驚いたのと、ここには載ってないんですけど、最近の女性ラッパーではRapsodyとNonameが頭一つ抜けてる感じがある

     

  14. 4 Your Eyez Only - J.Cole

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     いや待ちに待ったという感じで、フロウもトラックも今までのコールと違ってるんだけど、リリシズムは健在というなんかもう奇跡みたいな存在。前のアルバムみたいに面白い曲はないけど、全曲シリアスで雰囲気がダークになった分めちゃくちゃ響く

     

  15. Blonde - Frank Ocean

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      いやなんかもう、最高でしょ。フランク・オーシャンはバイセクシャルなんですけど、カッコ良すぎて俺もバイセクシャルになりそうになった。前のアルバム『チャネル・オレンジ』もよかったけど、越えてきた感じ

     

  16. Coloring Book - Chance The Rapper

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     10年後とかにもバリバリ現役で行けそうなくらい最高。ハッピーになれる。売れてきた直後なので客演がめちゃくちゃ豪華なのもすごい。もはや書きたいことありすぎて書かないことにしたけどそれもノープロブレムといった感じ

 


 

 ここからは、残念ながらランキング入りはしなかったけどオススメといったところの紹介ということで、番外編です

 

  • たりないふたり - Creepy Nuts (R-指定&DJ松永)

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     フリースタイルダンジョンでおなじみR-指定さんのユニットのアルバムです。『みんなちがって、みんないい』めっちゃいいけど、ラップある程度知らないと面白さ伝わらないのでランク外ということになりました

     

  • Views - Drake

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     ドレイクっぽいラップと歌の融合なんですけど、なんかいろんな音楽のテイストが入ってきてて、カッコよくはあるんですが、ハイペースでアルバム出し続けているのとかもあってクオリティを徹底的に突き詰めたかは微妙なためランキング入りは果たしませんでした。売れてるとは思うけどね、ポップすぎる気はした

 


 

 こうして改めてみると、今年は結構豊作だった気がする。

 

 おわり

 

 

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「キャンディタウンインダビルディン、メーン」じゃあないんだよ

 

 オフに入りました。所属するクラブのです。学校ではないです。学校がオフだったら今頃僕はここにはいません。実家なうです。いや今は家なうなんですけど

 

 今までさんざん時間を費やしてきたものが一時的になくなったのでそれはもう手持無沙汰、ということで、無になってしまう前にYoutubeでいろいろとディグ(ヒップホップ用語で「探す」の意)ります。日の課ということです。

 

 「さて今日もハイライトでも見るか」と大体最初はNBA(アメリカのプロバスケットボールリーグ)の試合のハイライトを見ます。でも10年前のYoutubeを知らない人や普段Youtubeを使う人にはわかると思うんですけど、最初の広告動画、あれキツくないですか?

 

 個人的にブランドとしてリーボックは好きです。他ブランドとは違う一線を画したデザインとかすごい好きです。Youtubeと違って今も昔も好きです。10年前からYoutubeを使ってない人には今のYoutubeはお勧めしませんが。

 

 

 

 

 

 「エェーイ、イェー、ワッサー、メーン」

 

 「ワサーワサー」

 

 キツい

 

 何がキツいって、彼らのうち何人が英語喋れるかは知らないですけど、英語で行きたいならもっと発音を練習してくれ。なんだ「ワッサー」って。何かが大量に出てきた時の千原ジュニアか?「メーン」て。剣道じゃないんだから。剣道じゃなくヒップホップをやってくれ。

 

 (あと、ちょっとあとの「ホドホド」もキツイ)

 

 彼らは日本のヒップホップクルー、KANDYTOWN(キャンディタウン)だそうです。イカついお兄さん達がイカつい髪形して、怖い感じの音楽聴いてますね。

 

 ここでラップ及びヒップホップについて説明させてください。ヒップホップでは基本的に「リアルさ」が重要視されます。「リアル」であればあるほどカッコいいのです。つまり、嘘偽りなく自分や社会のことをラップすれば、それは「リアル」ということになります。例えば、レジェンドの2Pacやビギーの時代のリアルさは「俺はこんな貧乏な生まれだが、差別にも負けずここまできた」みたいな自慢でした。彼らが活躍した80~90年代ではまだまだ差別エゲツなかったですし、黒人皆貧乏也みたいな社会だったんですけど、そんな社会にも負けずラップだけでここまで来たぜ、お前らも頑張ればここまで来れるんだ、みたいな彼らはめちゃくちゃカッコよく、「リアル」だったわけです。これが流行ってからは単に「こんなに金持ってるし女も侍らせてるぜ」という自慢だけになってしまったのですが、そんなラッパーたちに嫌気がさしたラッパーが「嘘じゃん」と言ったり、未だある人種差別などの社会問題についてラップすることで、また違った「リアル」を提示しているのが現代のラッパーと言えます。貧乏過ぎてクスリ捌いて生計を立てる、とかよくある話なんです。

 

 これはアメリカのシーンです。でもここは日本。人種差別と言っても日本人にはあまり関係がない。というよりも存在を認識していないですね。麻薬もアメリカほどポピュラーではないし。

 

 では、果たしてKANDYTOWNは「リアル」なのか?

 

 リアルじゃないし、ダサい。というのが僕の感想です。「お前ら日本人なのに英語でラップして、それっぽい英語使って、アメリカ人みたくやるのはリアルじゃないだろ」ということです。日本人なら日本語でラップしろよ。いや英語でもいいんですけど、英語喋れんの?スラング分かるの?FワードとかNワード*1使ってるけど、それどういうことか理解してる?(Nワードを使う時点で理解していないだろうけど) つまり、お前ら「リアル」じゃないじゃん、という話になります。

 

 だって、日本に「ゲットー」とか「フッド」*2とかいう概念ないし。語尾だけ英語にして韻踏んだって、それはアメリカ人の真似事だし。発音的に英語も喋れるわけではなさそうだし。しかも一人マリファナ吸ってトリップしてるみたいな感じのやついるし。どうせ吸ってないし、内容も全然「リアル」じゃない。「アメリカ人みたいでカッコいい」って言われたいだけならいいけど、それどうあがいてもオリジナル越えられないし、自分らしさが全くなかったら、それは「リアル」とは言えないよね。だからちっともカッコいいと思わない。そもそも、この大人数のクルーもウータンクランのパクリだろ。

 

まぁつまり、

 

勘弁してくれ~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!

 

ということです。以上

 

 

 

*1:FuckとNiggaのこと

*2:ゲットー:スラム街のこと。フッド:近所みたいな意味。アメリカの住居のありかたが日本とは違うので、日本でいう近所とは少し違う