Kaguyatom

(Explicit)

ラップ

 

 

 

 UMBをご存知ですか?

 UMB("Ultimate MC Battle"、アルティメットMCバトルの略)は日本最大級のMCバトル(ラッパー同士がディスりあうやつ)イベントの一つで、2005年から今まで毎年、年末のビッグイベントとして、数々のベストバウト(レベルの高いバトルのこと)を生み、ヘッズ(所謂ファン)を魅了してきました。MCバトルは基本的にトーナメント形式で行われますが、UMBも例外ではありません。フリースタイルダンジョン(以後FSD)から入ったにわか層である僕は2014からしか見てません。カッコが多くてすみません。ちなみに、UMB2014は過去最高とか言われてましたが、個人的にはUMB2016の方が好きです。みなさんは、個人ですか?

 

 実は、これは伝わってないかもしれないんですけど、今回のテーマは「UMB2016」なんですよね。今まで見た2014、2015、2016の各大会の中で、5回以上見たのは2016だけです。「少ない」とか、にわかファンには言わないようにしましょう。

 

 「実は」が二回続くのはいい文章なんでしょうか。僕にはわかりませんが、おそらくよくないでしょう。……実は、このUMB2016が面白かった理由が、これもめちゃくちゃにわかな理由なんですが、ネームバリューのある有名ラッパーが出ているからなんですよね。その有名ラッパーに対して無名のラッパーが噛みつく様も最高だし、有名ラッパー同士がぶつかり合ってどちらかが負けてしまう厳しさも「アツい」ので最高です。「最高」も二回続いてしまいましたね。文章を書くのが下手

 

 僕的ベストバウト(前述)を5つ選んだので、お願いします。ちなみに、ネタバレになるのと、ベスト8以降は全部良かったので除外してます

 


 

 大会の基本的なルールとして、1、2回戦は8小節×2本(DJがかける曲の8小節ずつを交互に2回ずつ)で進行され、ベスト16(3回戦)からは8小節×4本(交互に4回ずつ)で行われます。準決勝からは、先攻が8小節×4本or16小節×2本及び、3人のDJの中から曲をかけるDJを選択します。これは、MCバトルの特性上、後攻が非常に有利であることから来ています。また、勝敗を決めるのは観客と陪審員です。まず観客は、先攻もしくは後攻どちらか一方のMCに声を上げます。それで声に差がない場合に延長に入ります。観客の声でどちらかに決まると陪審員の投票になります。観客と陪審員両方の支持を得たMCが勝利となります。観客と陪審員がぶつかり合った場合は延長になります。はい、ベストバウトです

 

  • 1回戦第1試合: Rack vs. Siva

  初登場同士の戦いでしたが、いわゆる高ラ、高校生ラップ選手権でプロップス(人気)を得たRackと、普段はラップをやるバンドを組んでいるSivaの戦いで、Sivaのことを知らなかったのもあって僕は「これはRackだろ」と思っていました。先攻Rackで始まり、特徴である固いライミング(韻を踏むこと)をかましていてさすがだな、と思っていたら、後攻のSivaが会場を巻き込むアツいバイブス(感情とか勢いとかもろもろ)で観客を味方につけました。Rackの二本目ではライミングに観客が沸かず、Sivaがダメ押しの呂布カルマというMCのサンプリング(曲の歌詞や違うバトルで他のMCが言ったことを引用すること)、「言葉の重みが違え Rack 誰やねんお前」でRackを殺し、Sivaが勝利しました。

 この戦いのポイントは、やはりSivaのサンプリングですね。呂布カルマが過去戦極MCバトルという大会で言った「これがボクシングなら有り得ねぇ 言葉のウェイトに差がありすぎる」と、UMB2014で相手であったスナフキンに言った「スナフキン 誰やねんお前」から来ています。別々のバトルから引っ張ってきたSivaの即興のスキルの高さに脱帽です。

 

  続いて、大阪・梅田でラップをしている集団である「梅田サイファー」の一員で、過去UMBをはじめ複数の大会で好成績を残しているふぁんく、上述の呂布カルマと同じ名古屋のMCで、呂布カルマに「よく似た」MCであるヤングたかじんが戦いました。こんな好カードで8×2なのがもったいないですね。「ね」って言われてもわからないですよね、すみません。説明しておくと、梅田サイファーなどの大阪のラッパーは固いライミングを信条にしていて、ふぁんくはライミングで有名なラッパーですが、それに対し呂布カr……ヤングたかじんは、ライミングにこだわらず(踏まないとは言ってない)、強烈なパンチライン(相手にダメージを与える言葉)を繰り出すスタイルで有名です。

 それもあって、ふぁんくは最初「相手はあの『言葉の重み』おじさんだ」などで煽りつつ、ライミングをかまし、いつものふぁんくといった感じでした。しかしヤングたかじんは「サイファーの王様 追い返す大阪」と、ライミングを含んだパンチラインで上回りました。それを受けふぁんくは「サイファーの王様 大麻の量かな?」と呂布カルマのラインを拾って「王様 大阪」の4文字の韻に対し、8文字で踏み返す凄まじいライミングを披露します。しかし呂布カルマはその後もパンチラインを吐き続けヤングたかじんが勝利しました。

 ザ・呂布カルマといった感じのバトルでした。とにかくパンチラインを吐き、相手のライミングにも動じないスタイルがドハマりしました。特に2本目の「いつまで韻踏んでんだ ただの言葉遊びじゃねえか」からの「お前のCDが売れない理由を教えてやるよ CD買ってまでダジャレなんか聴きたくねえってことだ」のパンチラインがもう、ボコボコにしてました。最高でした。ちなみに、ふぁんくの入りのラインは最初のトレイラ―に入ってます(3人目)。

 

  • 3回戦第2試合: MOL53 vs. ウジミツ

  めちゃくちゃ有名なMCで、以前大麻でワッパいかれた(捕まった)MOL53(「もえるごみ」と読む)と、呂布カルマに似たスタイルのウジミツの勝負です。ヒップホップと大麻などのドラッグは関係が深く、「リアル」を語るMOL53は大麻で捕まるとかいう「リアル」を体現する男なわけです。1回戦でも「UMB2016おまちどおさま 今年は俺に任せな」と死ぬほどカッコいいラインを吐いていました(最初のトレイラ―を参照)。ちなみに僕はMOL53めちゃくちゃ好きで、曲もめっちゃ聞いてます。

 MOL53が「お前みたいなザコMCは殺す」みたいなことを言うと、ウジミツは「死体からウジとなりまたウジミツに戻る」と言い返します。それに対しMOL53は「いや、人は死んだら終わりなんだよ」とド正論をぶつけます。リアルな男がリアルなことを言うのでもちろん会場は沸きまくります。MOL53の勢いを止められず、ウジミツは負けてしまいます。

 MOL53はとにかくワードセンスが良く、必ずしも長い韻を踏んだり、フロウ(歌いかた)がめちゃくちゃいいとかではないんですけど、バイブスとワードセンス、そしてその「リアルさ」で相手をボコボコにしてしまうパンチラインを生むラッパーで、ウジミツもパンチライン型ではあるんですが、それを当たり前のように上回るMOL53がいかにすごいかがわかりやすいバトルでした。

 

  • 3回戦第5試合: ムートン vs. BASE

  これはUMB公式がYoutubeに動画を上げてるので見てもらいましょう。

3回戦第5試合

 

 

3回戦第5試合 延長

 

 

 見てもらったらわかると思うんですけど、二人とも何言ってるかわからないと思うんですよね。慣れると聞き取れるんですけどね、一応ね。延長に関しては二人とも草(大麻)の話をしてるので意味も分からないと思うんですけど、注目してほしいのが、二人の声質と、延長のムートンの「秘密主義第七サティアン ポッケん中クッシュかサティバ」や「心構えが ラップ始めたの九日前か?」のライミングです。ヤバいですね。 二人とも声質がカッコいいのと、フロウがめちゃくちゃうまいのが特徴です。あと、BASEは呂布カルマが代表を務めるレーベル『Jet City People』の一員です。だから「呂布カルマ殺してえし~~」と言ってます。よろしく

 

  • 3回戦第7試合: 句潤 vs. じょう

  「さっきも喋った 俺が喋ったじゃん それパクリって言うんだ 今日のレクチャー1 I'm No.1 今日のワンダーランド I'm No.1」というラインがトレイラ―の5人目が言っていると思います。あれが句潤です。フロウがめちゃくちゃうまいことで有名です。対するじょうは高校生ラップ選手権で名を上げたMCです。アンサー(相手のディスに対する返し)が特徴です。

 先攻の句潤がフロウで見せると、それを真似したじょうに対し喋る感じで「同じフロウ聴いて面白かったっすか?」と観客に聞きます。パンチラインです。じょうはまたそれを真似して喋ると、上のラインになるわけです。「パクリ野郎が」と言われてしまったじょうは、結局巻き返せず終わってしまいます。

 このバトルは不利と言われている先攻がいかに試合を運ぶかの例と言えます。見事に自分のペースで戦った句潤のバトルの強さが感じられます。すごいですね

 


 

  ここまで面白さを解説してきたつもりです。FSDだけで止まっている人や、Youtubeで見てるだけの人とかいたら、高くないのでUMBなどMCバトルイベントのDVDを買って見てみましょう。好きなMCやラップの面白さに気付くとドップリハマれます。

 

 あと、気付いた人もいるかもしれないんですけど、ベストバウト2つ目くらいで疲れてます

 

おわり

 

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